【介護予防コラム⑨】
ステップが転倒予防の肝!?

高齢者の事故のうち、救急搬送される割合が最も多い「転倒」ですが、ステップが転倒予防に役立つことをご存知ですか?

どういうこと!?

詳しく説明していきますので、まずはなぜ転倒が起こるのか、どういう状況で転倒するのか、転倒するとどうなるのか…転倒の基礎知識からお伝えしていきます。「そんなのはいいからステップ教えて」という方は、こちらへお進みください。

転倒とは

まず転倒とは、「地面や床、あるいはそれ以下の面に自らの意図なしに接地するイベント」と世界的に定義されています。日本ではそれをさらに3つに分類しています。まず、転倒。同一面上でバランスを失い倒れてしまうことを指します。次に、転落。高い位置から低い位置まで、何かに接触しながら転がり落ちることをいいます。最後、墜落。高いところから低いところへ、落下してしまうことをいいます。

 

転倒はなぜ起こる? 転倒の原因とリスク要因

「転倒」の原因は皆さんの身体的な影響や環境が影響しており、さまざまな要因が転倒につながります。

・筋力低下
・バランス機能低下
・聴覚感覚低下
・感覚障害
・関節の柔軟性低下
・認知症
・服薬・精神状態
・衣服履物
・環境設定(段差等)

中でも筋力低下は最も大きな原因です。下図に示すとおり、筋力低下を引き起こすことで、転倒リスクがなんと4.4倍高くなってしまいます。日々体を動かして筋力を維持することが大切ですね。

 

転倒しやすい場所はどこ?

皆さん、最も転倒が起きている場所はどこだと思いますか?

お風呂場? でこぼこした歩道? いいえ、実は自宅、それも居室・寝室で最も転倒が起きているんです。しかも、その件数は圧倒的。寝起きや夜中に起きてトイレに行くとき、何かにつまづいて、ふとした拍子に…などなど、シチュエーションはいろいろだと思いますが、過ごす時間の最も長い場所で最も転倒が起きているんですね。足場の悪い場所や特別な状況でのみ転倒が起きているわけではないんです。

 

転倒するとどうなる?

転倒による怪我の位置の割合としては、頭部約4割、上肢約1割、腰部約1割、下肢約3割といわれています。大まかに、頭の怪我と骨折の2つに分けられますが、代表的な骨折部位としては、上腕骨、手首(橈骨)、背骨、大腿骨の骨折が挙げられます。また、これらの骨折を起すことで、寝たきりとなり、生活に介助が必要な状態となられる方もいらっしゃいます。

 

実際に介護が必要になった理由を調べてみると、骨折や転倒が1割以上を占めており、骨折による寝たきりが身体機能にどれだけ影響を及ぼすかお分かりいただけると思います。

 

転倒はどのように起こる?

人はなぜ転倒してしまうのか。それは、重心が体の外にはみ出してしまうことで起こります。重心とは、その点が支えられれば身体全体を支えられる点のことをいいます。ちょうど体の真ん中あたりにあります。重心は、地球の真ん中に向かって(つまり垂直に)引っ張られています。身体が右に傾くと、重心も右へ移動していきますが、重心が支持基底面内に留まっていれば転倒しません。しかし、さらに身体が傾き重心が支持基底面から外れてしまうと転倒してしまいます。

※支持基底面とは、身体の床に接している面の外周によって作られる領域です。

 

若者は転倒しづらく、高齢者は転倒しやすいのはなぜでしょうか? それは、若者は重心が支持基底面外に出た瞬間にもう片方の足をすばやく出す、瞬発力や、筋力関節の柔軟性があるからです。

とっさのステップを繰り出すためのトレーニングをご紹介!

それでは、ようやく本題です! いざというとき、もう片方の足をすばやく出すための5つのトレーニングをご紹介します。それぞれ1セット10回、1日3~5セットを目安に、体重移動を意識しながらゆっくりと行ってください!

まずは、開始姿勢と基本姿勢をご紹介!

転倒防止のため、ふらつきが気になる方は手すりやテーブルに手を添えてください。手は補助的に使用し、体重をかけずに運動を行います。

 クロスステップ(前)

脚を前に交差させます。左右交互を1回として、10回行います。

 クロスステップ(うしろ)

脚を後ろに交差させます。左右交互を1回として、10回行います。

 サイドステップ

脚を真横に踏み出します。左右交互を1回として、10回行います。

 

かかと上げ&つま先上げ

かかと上げ…両足でつま先立つようにかかとを上げます。

つま先上げ…かかとを起点に、両足のつま先を上げます。

それぞれ10回ずつ行います。

 

 

まとめ

介護が必要となるきっかけになりやすい転倒。筋力アップとステップ動作の訓練で予防しましょう!というお話でした。

筋力訓練や、柔軟体操はどのくらい続けたほうがよいのかという質問をよくいただきますが、筋力訓練は週に3回2日おきに実施し、3ヶ月以上継続するのが望ましいといわれています。また、柔軟体操は毎日こつこつと続けることがコツです! 柔軟体操、筋力訓練を継続的に実施し、転ばない身体を作っていきましょう!


今回の執筆者

レッツリハ!  熊本 エリアマネージャー
理学療法士
田中 光宏


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