【介護予防コラム⑩】理学療法士が教える、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)運動
皆さんはこのような肩の症状で悩まれてはいないでしょうか?
- 洗顔や洗髪するときに肩が痛い。
- 上着の脱ぎ着がやりにくい。
- 背中がかゆくてもうまくかけない。
- 夜になると肩が痛くて眠れない。
もしかしたらそれは、四十肩や五十肩…“肩関節周囲炎”かもしれません。
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肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)とは
強い肩の痛みが続く際によく用いられる四十肩・五十肩とは、医学的に“肩関節周囲炎”という疾患に分類され、中高年期を境に急激に発症率が増加することから、老化との関係性が高い疾患と考えられています。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)になる原因について
加齢とともに組織の老化が始まると、肩周辺組織への疲労が徐々に蓄積されていきます。それによって関節内の組織が硬くなったり、筋肉とそれにつながる腱の炎症、さらに筋肉の凝りの悪化が加わり肩の痛みが起こるのです。
また、痛みで動かせないことにより肩まわりの血行が悪くなり、さらに関節が硬くなってしまう…という悪循環にもつながってしまいます。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)改善のポイント
肩関節は上腕骨と鎖骨、さらに肩甲骨によって構成されており、これらをつなぐ関節の連動性を取り戻すことが痛みの改善に重要となります。
そのため、運動を行う際は腕を動かすだけでなく、肩甲骨を含めた肩全体をしっかりと動かす意識で運動を行っていきましょう。
肩の運動メニューその① 脱力ゆらゆら運動
運動の目的:肩関節周囲組織の可動性改善
肩まわりを動かしやすくする運動です。
※肩関節周囲炎の改善が期待できますが、痛みの強い時期に自己判断で行うのは危険です。整形外科の医師の指示を仰ぎましょう。
腕の力を抜いた状態で上半身を前に倒すと、鎖骨の後ろあたりにある棘上筋に負荷のかかりにくい状態で肩関節の運動ができます。
さらに、腕の重さに加えて500gのペットボトルを持つことで、ストレッチ効果も加わります。(ペットボトルを持って痛みのある方は、何も持たずに腕の重みだけで運動してください)
【運動方法】
・テーブルに手を置いて、痛みのある方の腕を力を抜いて垂らす。
(ペットボトル500㎖を持つとなお良い)
・痛みのない範囲で前後に揺らす。
(上体を揺らし肩に力を入れないようにする)
肩の運動メニューその② 肩甲骨周囲筋ストレッチ
運動の目的:肩甲骨の動きをスムーズにする
肩関節周囲炎の予防・改善が期待できます。痛みのない方は予防的に無理なく行いましょう!
肩甲骨を意識して腕・肩を動かすことで肩甲骨に付着している筋肉のストレッチを行うことができます。凝り固まった筋肉がスムーズに動くことで肩甲骨の動きが滑らかになり、関節運動をする際の組織への負担を軽減することができます。
【運動方法】
・背筋を伸ばして座り、両手を組み上へ伸ばす。
・同じく手を組んだ状態から今度は前方へ伸ばす。
・今度は後ろで手を組み胸を張る。
肩の運動メニューその③ うちわあおぎ運動
運動の目的:ローテーターカフ(肩周辺の筋肉群)の強化
肩関節周囲炎の予防・改善が期待できます。痛みのない方は予防的に無理なく行いましょう!
ローテーターカフ(回旋筋腱板)とは、肩甲骨に付着する棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋から構成される筋群を指します(最初の図を参照)。これらの筋肉は、肩関節を動かす際の安定性に深く関わります。これらの筋肉を強化することで、肩関節の安定性が増し、関節運動の負担を軽減することができます。
☆うちわを使う理由
空気抵抗が負荷となり、運動の効果が高まります。さらに、手首の向きを意識できるため運動フォームが保たれ、効果的で組織を傷めないトレーニングとなります!
【運動方法】
・うちわを持ち、肘を脇腹につけ90度に曲げる。
・うちわをあおぐように内側と外側へうちわを振る。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)対策 肩の運動の際の注意点
肩関節周囲炎は痛みが強い時期に無理をして肩を動かすのは逆効果となることがあります。痛みの出はじめや強い痛みが続いている時期は、まずは安静に過ごすことを心掛けましょう。
また、肩関節周囲には多くの組織が集まっており、複雑な構造をしています。どの組織が痛みの原因となっているか、画像診断が必要となることもあります。不安な方は、整形外科の受診をおすすめします。
本日の執筆者は…
レッツリハ!黒門
理学療法士
吉田 晋也