【介護予防コラム㉗】糖尿病患者における運動のススメ

今回は、現代日本のとても身近な病気、「糖尿病」の患者さんに運動をしていただきたい!というお話です。まずは糖尿病の基礎知識からお話していきたいと思いますが、「良く知ってる」という方は糖尿病についてのパートを飛ばして、「2.糖尿病と運動」からご覧ください。

糖尿病について

日本に2000万人!?

現在、国内の糖尿病患者とその予備軍は、なんと2000万人と言われています※。実に日本人の6人に1人が糖尿病か予備軍という調査結果が出ているんです。年齢別にみると高齢になるほどその割合は増え、年齢を重ねるごとにより身近になってくる病気だと言えます。

※平成28年「国民健康・栄養調査」より

糖尿病って、実際どんな病気なの??

では糖尿病は、実際どのような病気なのでしょうか?
「糖尿病」とは、簡単に言うと「インスリン」というホルモンの量が不足したり、働きが悪くなることで、血液中のブドウ糖(血糖)が多くなりすぎた状態(高血糖)が長く続く病気です。

血糖値が高くても、初期のころは自覚症状がほとんどないため、糖尿病に気づかなかったり、気づいていてもつい治療をおろそかにしてしまう人も少なくありません。

糖尿病が進行すると…

放置したまま糖尿病が進行すると、合併症が引き起こされてしまいます。また脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる病気を引き起こす可能性も高まります。ですので、早いうちから血糖値をコントロールしつつ、生活習慣を整えることが大事になってきます。

糖尿病の三大合併症とは

壊疽を起こして足や手を切断することもある糖尿病神経障害、失明に至ることもある糖尿病網膜症、透析治療などが必要になる糖尿病腎症の3つの合併症をいいます。

糖尿病の治療

糖尿病の治療の目標は単に血糖値を下げることではありません。本来の目標は、糖尿病に関連した合併症の発症や進行を阻止し、健康な人と変わらない生活を送ることです。

治療の基本は食事療法と運動療法です。これは、1型、2型などのタイプにかかわらず、すべての糖尿病に共通する治療の基本です。そして、食事・運動療法をしても血糖をコントロールしきれない場合は薬物療法を行います。
ここでは、運動療法にスポットを当ててお話しします。

糖尿病と運動

運動療法の効果

運動療法は、運動により使われた筋が糖や遊離脂肪酸の利用を促進させることで、血糖値の上昇を改善させます。このため、血糖コントロールの改善・インスリン感受性の増加・脂質代謝の改善、血圧低下、心肺機能の改善が得られ、糖尿病を改善するとされています。

難しく書いてしまいましたが、つまり食後に運動をすると、血糖値の上昇が改善され、糖尿病のコントロールが良くなることがある、ということです。では、どんな運動が有効なんでしょうか?

糖尿病の方にオススメの運動療法の種類

大きく分けて、3タイプの運動をオススメします。それぞれの運動の方法、オススメの頻度や強度をお伝えしていきますが、糖尿病の方が運動を行う上での注意点も書いておかねばなりません。この章の下に記載しますので、運動を始める前にご確認ください!

①毎日コツコツ、有酸素運動

有酸素運動とは
ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車こぎなど、長時間継続して行うことができる運動のこと。

糖尿病患者の糖代謝の改善は運動後12~72時間持続します。血糖値を低下改善させるため、運動はできれば毎日、少なくとも1週間のうち3~5日行いましょう。

自宅でできるトレーニング
足踏み・自転車エルゴメーター

オススメの運動強度:中程度
「最大酸素摂取量の50%前後」なんて言われても、なかなかピンときませんよね。目安は運動時の心拍数です。
50歳未満の方…100~120拍/分
50歳以降の方…100拍/分以内
※不整脈などで心拍数を指標にできない場合、自覚的運動強度として、「ややきつい」または「楽である」を目安として運動を行う。

オススメの頻度と長さ
できれば毎日、少なくとも週に3~5回
各20~60分間、1週間の合計150分以上

 

②食後にやろう! 無理は禁物、レジスタンス運動

腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワット、腿上げ、踵上げ、上体起こしなど、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動のこと。自分の体重(自重)やゴム製のチューブ、ダンベルなどで負荷量を調整して行うことができる。

自宅でできるトレーニング
スクワット、腹筋、踵上げ、腿上げ

オススメの頻度
1種目につき、10~15回を1セットとして1~3セットを週に2~3回
※虚血性心疾患などの合併症患者などでは高強度のレジスタンス運動の実施は勧められない。
※高齢者においても急激な頻度や回数での実施は勧められない。

オススメのタイミング
運動を実施するタイミングは、生活の中で実施可能な時間であればいつ行っても構いませんが、特に食事の1~2時間後に行うと食後の高血糖状態が改善されます。習慣にしましょう!

③安全で効率良し! 水中運動

有酸素運動およびレジスタンス運動の両方が行える運動種目。
プールへ行くのはハードルが高いかもしれませんが、膝への負担が少なく、肥満糖尿病の方には安全かつ効果的な方法なので、非常にオススメです。

水の特性である「浮力・抵抗・水圧・水温」を利用して運動ができ、それぞれを活用するメリットがあります。例えば、浮力は、水中で体を軽くします。腰あたりの水位だと体重が約半分に、肩まで水につかると10分の1になります。また、水の抵抗があることで動きがゆるやかになり、膝関節や腰部に瞬間的に大きな負担がかかることがありません。つまずいたり滑ったりしたときにも、水の抵抗を受けるので転倒の心配もないんです。ぜひ試してみてくださいね。

オススメの組み立て
30分間から1時間程度のメニューを組み、途中で何度か休憩をはさみます。泳いでも歩いても大丈夫。

オススメの運動強度
休憩のときにあまり疲労を感じない程度を目安に行いましょう。

糖尿病患者が運動を実施する上での注意点

運動がいいと知ると善は急げと始めたくなるものですが、糖尿病の患者さんが運動するにあたっての注意点がありますので、もう少しだけお付き合いください。

注意点① 運動の前後に5分間の準備・整理運動を行いましょう。
糖尿病の有無にかかわらず、いきなり運動を始めると怪我につながります。運動後の疲労を軽減する整理運動もセットで行うのがオススメです!
例…屈伸や伸脚、上体・手首・足首の回旋、深呼吸、足や首や肩周りのストレッチなど

注意点② 次の状態の方は運動中に高血糖になるリスクがあるので、一旦運動を中止するか、運動強度を下げるなどの対応が必要です。
・血糖がコントロールされていないⅠ型糖尿病の方
・空腹時血糖250mg/dL以上の方
・尿ケトン体陽性の方

注意点③ 次の状態の方は運動中に低血糖になるリスクがあるので、運動量が多い場合は補食をとる、または運動前後のインスリン量を減らすなどの対策が必要です。
・インスリンや経口血糖降下薬で治療を行っている方

②③は糖尿病の治療と深く関わりますので、運動を始める際は主治医にご相談ください。

まとめ

糖尿病の改善に限らず、運動を習慣にすることは健康な毎日を続けるためにとても大事です。とはいえ…

運動しなきゃと思っていても一人ではなかなか続かない
具体的にどんな運動が自分に合っているのか知りたい
同じ年代の同じ悩みを抱えた人とも話したい

という方は多いのではないでしょうか?
レッツリハ!では、理学療法士がお一人おひとりに合った運動メニューを組み立て、取り組んでいただきます。定期的に体の状態を数値で計測するので、運動の成果を確認できて、続ける習慣作りに役立ちます。また、お客さま同士の交流もありますので、同年代の方と一緒にがんばれるのもポイントです。

気になった方はお近くにある桜十字のリハビリジム、レッツリハ!までお問い合わせください!

 

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今回のコラム執筆者は…

レッツリハ!荒江店
理学療法士 森 智佳子