【介護予防コラム㉙】認知症の予防トレーニングに、脳トレ×運動のコグニサイズ

現在日本ではものすごい速さで高齢化が進み、「超高齢化社会」となっています。その上に、コロナウイルスをはじめとしたさまざまな感染症が流行し、今まで行えていたことや外出が制限される世の中になりましたね。その影響が心身にストレスとして出てしまっている、なんて方も多いのではないでしょうか。

 特に高齢者では、外出機会や運動機会が減ったことで、あまり動かなくなってしまったり、家に閉じこもりやすくなってしまったという方が増えてきています。運動不足や閉じこもりは、いずれも認知症の発症リスクに数えられています。※1

認知症の現状

認知症にはさまざまな原因がありますが、加齢が進むほど発症しやすく、日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人(2020年現在)と推計されています。そして、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されています! 認知症は介護が必要となる原因の上位に数えられており、健康寿命を伸ばすためにも、認知症予防のための取り組みが今後ますます重要になってきます。

上の図は、世界的な医学雑誌「Lancet」に発表された、認知症の発症に関わる「修正可能な危険因子」の図を単純化したものです。この論文によると、なんと、認知症の発症のうち40%は遅延または予防できる可能性がある、ということなんです。年齢を重ねるごとにリスク要因が増えていきますが、生活習慣で改善できるものもありますよね。

認知症予防にコグニサイズ

最近「コグニサイズ」という言葉を耳にすることが増えたのではないでしょうか? コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターが軽度認知症の方の認知機能の維持・向上を目的として開発した、運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた運動です。英語のcognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)と言います。つまり、頭を使いながら体を動かすということです!

コグニサイズ トレーニングのポイントは?

●目的は、認知症の発症を遅延させること!
 頭を使いながら体を動かすことで脳の動きが活発になります

●「うまくできる」よりも「脳に負荷をかける」のが大事!
決して「課題がうまくなる」ことが目的ではありません! 課題がうまくできる=脳への負担が少ないので、課題に慣れ始めたら、どんどん内容を変えてみましょう。「課題を考えること」も大事な課題です。そして、間違えるのは恥ずかしいことではありません。他者と一緒に考えて笑って、そして楽しんで行なってください。

コグニサイズの運動の条件

①運動は全身を使った中強度程度の負荷(軽く息がはずむ程度)がかかるものであり、脈拍数が上昇する(身体負荷のかかる運動)

②運動と同時に実施する認知課題によって、運動の方法や認知課題自体をたまに間違えてしまう程度の負荷がかかっている(難易度の高い認知課題)

身体負荷は適度な強度で!

強度は下記の表から目標心拍数を求めて、運動の時に自分で脈を取りながら適正かどうかを確認することが重要です。

認知症予防に向けた運動コグニサイズ 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター P5より

コグニサイズの種類 ~国立長寿医療研究センターが提唱している3つの方法

①コグニステップ

・右横、左横にステップ
・左右、前にステップ 3の倍数で拍手
・その場で足踏みしながら肩をタッチ

②コグニウォーキング

・歩きながらしりとりや計算をする

③ コグニラダー

・基本は2マス8歩(1セット)
・応用で歩数を変えたり別の動作を加えたりしていく

コグニステップをやってみよう!

右横、左横にステップ+3の倍数で拍手

拍手のタイミングと足のポーズはズレていきます! 混乱しますが、脳に負荷をかけている証拠です。動画と下の図でコツを掴んでみてください。

左右・前にステップ+3の倍数で拍手

まとめ

コグニサイズは、全身運動と認知課題を同時に行うため、身体と脳の機能改善・維持が期待できます。そして、ひとつ付け加えるとしたら、だれかと一緒に取り組みましょう。冒頭に少しだけ触れましたが、認知症発症リスクの一つに「社会的孤独」が挙げられています。だれかと一緒に楽しみながら行えば、脳トレと運動、コミュニケーションの一石三鳥になります。早い段階からコグニサイズのような体操やトレーニングを行い、しっかりと認知症の予防をしていきましょう!

  • コグニサイズを行うことは、毎日の生活を健康に暮らすことや、QOL(生活の質)の向上につながります
  • だれかと一緒に取り組みましょう!

レッツリハ!でコグニサイズを体験してみましょう

レッツリハ!では、プログラムの一環としてコグニサイズを取り入れた体操を行っています。興味のある方はぜひレッツリハ!で一緒に楽しく運動をしてみてくださいね。

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今回の執筆者は…

レッツリハ!板橋みなみときわ台
理学療法士 鶴巻 彩乃

 


参考文献

※1Lancet. 2020 Aug 8;396(10248):413-446. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30367-6. Epub 2020 Jul 30.

コグニサイズ 認知症予防へ向けた運動;国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター