【介護予防コラム54】あなたのカラダは大丈夫?「ロコモティブシンドローム」の予防を実践しよう!
5月15日の日本経済新聞朝刊に「介護保険料最高、全国平均6225円(24~26年)…」という見出しの記事が掲載されていました。
著しい高齢化により利用者負担を除く費用総額は、介護保険制度の始まった2000年から2021年までに3.3倍(10.4兆円)に増加。保険料と介護サービスに係る費用のアンバランスへの警鐘とともに、国民の健康増進、高齢者の自立支援の強化、費用負担の見直しなどについて言及をしていました。
そこで今回注目したいのが「高齢者の自立支援の強化」。要介護状態になる原因とも考えられている『ロコモティブシンドローム』の予防について、見ていきましょう。
Table of Contents
『ロコモティブシンドローム』とは?
『ロコモティブシンドローム(運動機能症候群以下ロコモ)』とは、加齢に伴う筋力の低下や関節・脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態を表す言葉です。
この言葉を提唱した日本整形外科学会によると、要介護状態になる原因について全体の約2割は運動器の障害が原因であることがわかっているそうです。
ここで、介護が必要となる原因をおさらいしてみましょう。
この原因を俯瞰し思い切り大雑把に整理すると、「生活習慣病を予防し、適度な運動で関節や筋力を鍛える」ことが、要介護状態を遠ざける重要なポイントだよね!と言えそうです。
私はロコモ?ロコモかどうか診断してみよう!
最近「関節が固くなってきたな」とか「階段がつらくなってきたな」とか、感じることはありますか?
ここで、ロコモの診断基準を紹介したいと思います。
ロコモの診断基準
ロコモの診断基準は、日本整形学会の『ロコモティブシンドローム予防啓発サイト』に詳細が記載されています。
次のリンクより、ぜひ診断してみてください。
『ロコモ度テスト』はこちら
※なお、次のコーナーでは診断基準を抜粋しています。詳細については上記サイトをご参照ください。
ロコモ診断テストポイント
ロコモの診断基準は次の3つのテストにより評価されます。
次の①②③のテストのうちどれかひとつでも該当する場合、ロコモと判定されます。ロコモと判定されたら、移動機能や下肢筋力の低下が疑われ、それらを運動等で改善していくことが大切です。
ロコモの予防改善には?
ロコモ予防に関しては、公益財団法人長寿科学振興財団のホームページにわかりやすい記載がありますので紹介いたします。
公益財団法人長寿科学振興財団『健康長寿ネット』ロコモティブシンドロームの予防 の記事はこちら
日本のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者数は予備軍の人数を合わせると約1,940万人と推定されています。これは、40~74歳の男性2人に1人、女性の5人に1人に当たります。
ロコモティブシンドロームを予防するには、若いうちから毎日の生活の中に運動習慣を持ち、1日3回の栄養バランスがとれた食事により健康維持を図ること、骨と筋肉を強くすることが大切です。
また、それは自ずとメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防にもつながります(公益財団法人長寿科学振興財団ホームページより抜粋)。
つまりは、適切な食事(食行動)・適切な運動を行うことがロコモ予防の王道と云えるでしょう。
どんな運動が良いの? - 運動面から予防を考える -
ロコモ予防に適した運動とは、筋力と関節の柔軟性を高めることに集約されます。
では、ロコモ予防として実際にレッツリハ!西宮今津で行っているトレーニングをご紹介します。
これらのトレーニングは、手軽に行える内容となっています。ご自宅でも職場でも、空いた時間やリフレッシュをしたいタイミングなどに行ってみてください。
1. 筋力の強化
筋力がないと歩くこともままならず、より良い日常生活を送ることに支障をきたします。
筋力を強化するには筋肉に日常生活レベル以上の負荷をかけてあげることが重要で、レジスタンストレーニング(いわゆる筋トレ)を行うことで筋力を高めることができます。
YouTubeなどのネット上には様々なトレーニング方法が紹介されていますが、重要なポイントは、身体を支える大きな筋肉群(重力に抗う抗重力筋)に適切な負荷をかけること。具体的には脚部・胸部・背部・体幹のトレーニングを行うことです。
スクワット(脚部のトレーニング)
スクワットは全身の筋肉の約6割を動員するといわれています。
主に使う筋肉:大腿四頭筋・ハムストリングス・臀部 等
※股関節をしっかり屈曲させます
レッグランジ(脚部のトレーニング)
レッグランジは動きを伴う脚部の代表的なトレーニングです。
主に使う筋肉:大腿四頭筋・ハムストリングス・臀部 等
※踏み込んだ際、前に出した足で負荷をキャッチします
カーフレイズ(下腿三頭筋のトレーニング)
主に使う筋肉:下腿三頭筋
※踵を持ち上げます
ヒップアブダクション(臀部のトレーニング)
主に使う筋肉:中殿筋・大殿筋
※足を外に広げます(股関節を支える重要な筋肉です)
ベンドオーバーローイング(上背部のトレーニング)
背中・胸部の筋肉は姿勢に影響を与えます。しっかりと刺激を与えてみてください。
主に使う筋肉:広背筋・上腕二頭筋
※写真はセラバンドを利用しています。肘を上方に引上げ肩甲骨を寄せるよう意識します
プッシュアップ(胸部のトレーニング)
主に使う筋肉:大胸筋・上腕三頭筋
※写真は平行棒を使い大胸筋・上腕三頭筋にかかる負荷を軽減しています
2. 関節可動域の拡大(ストレッチング)
関節は動かさないと本当に動かなくなります。そうなると体をうまく使えなくなり、一部の筋肉や関節に不自然な負荷がかかり続け、筋肉や関節の痛みの原因の一つになることがあります。
関節可動域を高めるにはストレッチングを行うことが重要です。ストレッチングには様々な方法がありますが、ここでは動的ストレッチ(ダイナミックストレッチング)を紹介します。
肩関節を動かす
腕の振り上げ動作で肩関節を動かしていきます。
日常生活において、腕を頭の上まで上げるシーンは少ないと思います。しかし、動く範囲で関節を動かさないと関節可動域が小さくなり、将来的に関節に負担をかけることになります。
広背筋を動かす
腕を前から下から引く動作で肩甲骨周りの筋肉を動かしていきます。
筋トレ・ストレッチングとも、もっといろいろな方法があります。しかし大事なことは、毎日少しでも体を動かすこと。この一言につきます。
食事での注意点とは? - 食事面から予防を考える -
ロコモ予防の観点からも健康づくりの観点からも、適切な食事を摂ることは極めて重要です。外してほしくないポイントは”定食型の食事スタイルを心がける”ことです。
例)焼き魚定食
定食型の食事は、体を丈夫にする栄養素をもれなく摂取することできます。
忙しい毎日の中でも、定食型の食事を意識してください。
まとめ
健康を意識し、運動や食事に気をつけることは、生活習慣病の予防、そしてロコモの予防にもつながります。健康で快適な生活を長く続けていくことは人生の質に直結することだと云えます。
今回紹介した運動や食事方法が、皆さまの健康づくりの一助になることを願っています。
レッツリハ!では、今回ご紹介した他にも、皆さまお一人おひとりの身体の状態に合わせたロコモ予防法をご提案させていただいております。ロコモが気になる方、将来に不安がある方、『ロコモ度テスト』での結果が思わしくなかった方、ぜひお近くのレッツリハ!にご相談ください!しっかりとしたロコモ予防を行い、介護予防に繋げていきましょう!
今回の執筆者は…
Let’s リハ!西宮今津 理学療法士 今村 智子 |
健康運動指導士 越智 直彦 |